2014年9月13日、北海道日本ハムファイターズ対オリックス・バファローズ3連戦の初日。
試合開始前、選手が練習に励むグラウンドで、ドームブルーのユニフォームを着たスタッフが手際よく練習器材の設置や撤去を進める。
「グラウンドキーパー」と呼ばれる彼らは、主にグラウンド整備を担当する「土のプロフェッショナル」。
『札幌ドームの裏側』の初回は、野球の試合を支えるグラウンドキーパーの1人、東慎也を紹介する。

練習中の裏方の仕事

この日の試合は14:00プレイボール。遅番の東の1日は、10:00から始まった。
すでにグラウンドでは選手たちの練習が始まっており、チームの入れ替えのタイミングでグラウンドキーパーたちがバッティングゲージ、ピッチングマシーンなどの 練習器材の移動や撤去を行う。
土のメンテナンスだけではなく、グラウンドでのこうした力仕事も彼らの役目。
限られた時間ですべての作業を終わらせるため、分担された作業をチームワーク良く進めていく。

試合がある日は12人体制。決められた時間の中でそれぞれに割り振られた作業を終わらせなければなりません。
移動は走る、が基本です

試合前の整備と
プレイボールの瞬間

試合開始の約30分前、グラウンドの脇で出番を待っていたグラウンドキーパーたちが自分の持ち場に向かって駆け出す。
整備に使う「トンボ」を持って、東はホームベースに向かう。トンボには、それぞれ自らクギを打ち込み、自分専用のものを使う。
2013年に入社し今年で2年目となる東は、現在5代目となるトンボを使っている。
これまでのトンボは、打ち込んでいたクギが削れて使えなくなってしまったのだという。
札幌ドームで野球の試合が開催される日は欠かさず出社し、丹精込めて整備してきた証だ。

整備が終わると、グラウンドキーパーたちは走ってグラウンドを去る。
彼らが心を込めて整備したグラウンドでは、両チーム監督によるメンバー表の交換や、始球式が行われ、「プレイボール!」の声が響く。

試合前の整備が終わってグラウンドキーパー室に戻って、試合が始まる瞬間を見ているときが好きですね。
無事に始まるんだな、とほっとする瞬間です

この日も試合が始まる瞬間を影から見守った。

 

▲現在5代目となるトンボ



 

◀この部屋から試合を見守る

約2分、試合中の中間整備

5回裏終了時には、北海道日本ハムファイターズ戦では恒例となっている「YMCAダンス」のそばで中間整備を行なう。
音楽が流れる約2分の間に最大限の整備をするためにも、試合中は、1塁側ベンチのそばにあるグラウンドキーパー室で試合の様子、特にボールの弾み具合に注目している。

最初は「特等席」から試合を見るのに、とても緊張したし興奮もしました。
今は落ち着いて、しっかり試合の様子を見ています

小さいころから野球が大好きで、現在も草野球チームで野球を続ける東にとって、札幌ドームは夢の職場。

近くで選手を見ると、想像以上に大きくて驚きます。
学生のときからプロ野球に携わりたいと思っていたので、その夢を叶えることができて本当に嬉しい

試合終了後のグラウンドで

試合終了後、ファンが帰って静まり返ったグラウンドで、グラウンドキーパーたちが黙々と作業を行う。
翌日もデーゲームが行われるグラウンドを、約1時間半かけて整備する。

グラウンド整備で難しいのは、水の調整。土の固さや荒れ具合、その日の湿度によって水をまく量を変えます。
乾燥しすぎず、湿りすぎず、プレーするのに最高の状態となるように調整するのが難しいです

経験が物を言うグラウンドキーパーの仕事。
札幌ドームの開業当時から働くベテラン社員は、グラウンドキーパーの仕事を「これでいいというゴールがない仕事」と言い、いつでも真剣に土と向き合う。そんな先輩の姿を東は目標としている。

先輩たちの整備の仕上がりはやっぱり自分とは違う。
入社した頃よりは成長していますが、もっときめの細かいグラウンド整備ができるように、先輩たちの仕事を「見て」、感覚をつかみたいです

「プロ野球に関わる仕事をする」という夢を叶えた東は、目標とする先輩に学びながら、無事に明日も「プレイボール!」の声が聞けるように熱戦のあとのグラウンドで奮闘する。
14:00試合開始のデーゲームのこの日、東が札幌ドームを後にしたのは21:00を過ぎていた。


「札幌ドームの裏側」第1回をご覧いただきありがとうございました!
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