2015年9月。9月12日のコンサドーレ札幌戦で使用するホヴァリングサッカーステージの芝をメンテナンスする。
選手が最高のパフォーマンスを発揮できるよう、最高の「芝」を用意してコンサドーレ戦を支える施設部施設管理課グリーンキーパー・大友忠志を紹介し、芝管理の裏側に迫る。

◀細いロープが頼り

天然芝のストライプ模様は、
幾重にも重ねたアート

ストライプ模様に見える札幌ドームのホヴァリングサッカーステージ。
メイン側やバックスタンド側から見ても、またホーム側やアウェイ側からもストライプ模様に見える。芝は芝刈り機の進む方向と同じ方向に寝るため、行きと帰りで逆向きに芝が寝た状態になる。
そこに光が当たると反射の角度が変わり、濃い緑と明るい緑のラインが交互に見え、綺麗なストライプ模様ができる。

大友が率いるグリーンキーパーチームは、芝刈り機の行きと帰りの間隔をこの日は約10mごとに設定し、順序よく刈り取ることで綺麗なストライプ模様に仕上げている。

9月12日のコンサドーレ戦に向けて、今回は4回の刈り取りを行う。
まず第1回目は、9月4日。
この日は、縦方向の刈り取り。ロープをゴールラインと直角になるよう設置し、ロープに沿うように刈り取り機を行きと帰りを交互に走らせ刈り取る。
第2回目は、9月7日。この日は横方向で、ロープをサイドラインと直角になるよう設置し、同じくロープに沿って刈り取る。
第3回目は9月8日に縦方向、第4回目は9月11日の試合前日、横方向に刈り取る。

縦、横、縦、横の合計4回の芝刈りでようやくコンサドーレ戦を迎えることができる。
ホヴァリングサッカーステージの芝は、幾重にも刈り取りを重ねたアートだ。

芝の状態は「見れば分かる」プロの目

札幌ドームのホヴァリングサッカーステージの芝は天然芝だ。使用しないときは、外で日光を浴びさせ、育てている。芝は生き物。病気にかかることもあれば、水分が不足し芝が細くなってしまったりもする。それをいち早く見つけ、病気にかかっていれば殺菌処理を施し、水分が不足すれば散水したりしながら、まるでわが子のように大切に育てている。
大友に芝の状態をどのように見極めるのかを尋ねた。
大友は

見れば分かる

言葉少なげに語った。
それは毎日芝を大切に育てているから分かる職人技であり、「プロの目」だから分かるのだ。

▲コアリング作業

刈り取った芝はリサイクル

札幌ドームでは、刈り取った芝をリサイクルしている。芝の更新作業として、地面が固くなると空気の通り道がなくなって根が呼吸しづらくなるため、芝生に穴を空ける「コアリング」という作業を行うが、この作業で大量に発生する芝と根と砂を2007年度より分別し、砂を芝のメンテナンス用に再利用することで廃棄ごみを削減している。

また、2014年度より、これまで焼却ごみとしていた芝の葉と根の一部を堆肥にリサイクルし、さらなる廃棄ごみの削減に努めている。これらのリサイクルでひと手間作業はかかるが、環境に配慮するための大切な仕事だ。

「よ〜い、スタート!」で始まる
ライン引き。
チームワークで成す美線。

芝刈りが終わると、ラインを引く。
ラインには、ゴールライン、タッチライン、ハーフウェーライン、ペナルティエリア、センターサークルなどその他にも様々なラインがある。直線を描くときは、定規代わりの通称「ソリ」を使い、芝に優しい「水性ペイント」を噴射しながら直進する。
合図は、大友の「よ〜い、スタート!」。

4人で同じ速度で同じ方向に歩きながら、「水性ペイント」を噴射する。また曲線を描くときは、支点と「ソリ」とをロープでつなげ、コンパスのように支点を中心に円を描くように前進しながら「水性ペイント」を噴射する。ライン引きは機械では引くことが出来ず、全て人が引く。
職人たちの想いが入ったラインだ。

▲「ソリ」を使ってライン引き

▲見事なラインが引かれる

コンパスのように
支点を中心に円を描く
見事なラインが引かれた
グラウンド
▲ムービングウォール ▲開閉式可動席

▲屋内でも風通しを確保する
送風機械たち

ギリギリまで風を当て、芝を保つ

コンサドーレ戦の前日、9月11日の午後。ホヴァリングサッカーステージは空気圧によって7.5cm浮上し、34個の車輪を使い分速4mで札幌ドームの中に移動。さらに90度回転しセット完了。

その後は、屋内環境に芝を置くため、風を意図的に送り、芝にとって極力屋外と同じ環境を整える。送風機械は、巨大な扇風機のような送風機(青色)と館内の空気を風にして送る「ダクト」(オレンジ色)の2種類がある。一晩中、芝に送風し、試合当日の早朝これらの送風機械を撤去する。芝を最高の状態にするために、時間ギリギリまで行うとても大切な作業だ。

札幌ドームの芝

札幌ドームの芝は22〜25mmの高さに刈り取る。
2002年には、Jリーグから「J1ベストピッチ賞」を受賞した、札幌ドームの芝。

本州では、「ティフトン」という夏の暑さに強くピンと立っている芝が使われることが多いが、この芝は寒くなると茶色くなってしまう。そのため、札幌ドームの天然芝は、「ケンタッキーブルーグラス」と「ペレニアルライグラス」という北海道の寒さに負けない2つの芝を混ぜて使用している。

札幌ドームの芝は、コンディションが良いと言っていただきますが、この世界は良くて当たり前。それをいかに維持していくかが重要。国際的な試合の機会もあるけど、僕たちの作業は変わらない。ホームチームであるコンサドーレ札幌が1試合でも多く勝ってくれることが一番の願いです

また、冬の間、ホヴァリングサッカーステージは雪の下で冬を越すが、雪が布団がわりになって芝を寒さから守ってくれる。ホヴァリングサッカーステージに積もった雪の除雪は、毎年シーズン開幕前に行うが、天然芝を傷つけないように、仕上げの除雪はコンサドーレ札幌サポーターの方々をはじめ、ボランティアの皆さんの手作業で行っていただいており、ようやく春を迎えることができる。

▲2002年「J1ベストピッチ賞」を受賞

▲ボランティアの皆さんとともに、人力での仕上げ除雪

仲間とともに

グリーンキーパーという仕事は、一人ではできない。芝刈りもライン引きも、力を合わせなくてはできない仕事が多い。

このチームを束ねるリーダーの大友は、多くを語らないがその長年培った確かな腕とその大きな背中で仲間を率いている。

「ナーセリー」と呼ばれる、言わば芝の養成所。ここで約2年かけて育てた新しい芝を切り取り、補修用の芝として使用
選手の直前練習で空いたスパイクの穴などを、試合直前のわずかな時間で補修

大友に休みの日の過ごし方を尋ねた。

家で、のんびりまったりしているよ。だって、仕事で年中外にいるからね。
休みの日ぐらい外に出たくないよ(笑)

夏場は、ホヴァリングサッカーステージや、屋外サッカー練習場の芝管理、樹木の剪定や花壇の整備、冬場は駐車場や敷地内の除雪、雨の日だって排水溝の目詰まりの除去など、どんな悪天候でも尽きることのない大友の仕事はほとんど<外>。年中肌を焦がして汗を流す。

大友たちグリーンキーパーは、芝を大切に育て最高の環境に保つことで、コンサドーレ札幌の試合を裏側で支えている。

支えているなんてそんなにオレすごくないよ。
当たり前のことを当たり前にしているだけ

照れくさそうに笑う大友の目はとても優しかった。

是非、コンサドーレ戦でご来場の際は、大友をはじめとするグリーンキーパーたちの姿にもご注目いただけると嬉しいです。

また、コンサドーレ札幌への応援も引き続きよろしくお願いします。

施設部 施設管理課

札幌ドーム敷地内ならびに周辺地域の警備や交通対策、天然芝・人工芝のフィールドや敷地内の緑地等の管理、ドーム内駐車場運営や清掃業務管理。

グリーンキーパー 大友 忠志

ゴルフ場に11年勤務の後、その職歴を活かして札幌ドーム開業直前の2001年4月に入社。天然芝のプロとして、札幌ドームを開業前から現在まで支えている。

「札幌ドームの裏側」第5回をご覧いただきありがとうございました!
今後取り上げてほしい「人」「仕事」などがありましたら、ぜひお知らせください。
今回の感想もお待ちしております。

札幌ドームへのメールはこちら